アカデミー賞にノミネートされて話題になっている映画です。久しぶりに村上春樹の原作が家にあるのを思い出して引っ張り出してみました。

「女のいない男たち」というタイトルの短編集の中の一つです。

小説の楽しみ方はひとそれぞれにあるとは思いますが、村上春樹の小説の魅力は、一見話の本筋とは関係なさそうな背景や小道具、状況を楽しむことができることです。たとえばそれは、村上春樹の小説に出てくる料理を再現したレシピ本や、小説に出てくる音楽を解説した本が出てきたり、クラシックやジャズのアルバムが出てしまうことでもわかります。

ちなみに私は村上春樹の小説を読んで、「ノルウェイの森」(ビートルズ)を聴き、キューリのサンドウィッチや、キューリをただ海苔で巻いたものなどを食べたくなり食べていました。レシピ本も購入してしまいました。

特に短編集となれば、バーボンのロックを飲みながら、村上春樹の小説に出てくるジャズあるいはクラシックを聴きながら読みたくなる…そんな小説が多いです。(学生の皆様はコーラにしておいてください)

短編集なわけですから、当然短い小説です。残念ながら映画は観そびれていましたが、これを3時間くらいの映画作品にして、飽きずに観ることができると評価されているのを見たら、当然観たくなります。これだけ話題になれば、また映画館で上映するかな?と期待しているのですが…

さて、話がそれてしまいましたが、「ドライブ・マイ・カー」です。

この小説は、女性の運転する車に乗るのが好きではない主人公が、事情により自分で運転できないためドライバーを探していたところ、とても運転の上手な女性がいるからと紹介されて、修理を終えた愛車との対面と、同時にドライバーの試運転から話が始まります。この時、主人公がいかに思い入れのある車であるか、女性ドライバーの運転がいかに上手であるかが描かれています。これは、車の中の空間が、主人公にとってとても快適でリラックスできることを描写しています。このことがこの小説ではとても重要です。だからこそ、その後の展開になっていくわけです。

ぜひ皆さんにも読んでもらえたら良いなと思いますので、内容についてはこれ以上書きませんが、小説の楽しみ方というのは、実はけっこういろいろあるのです。たくさん本を読んでいる人なら、文章そのものの美しさに気づくことができます(お勧めは宮沢賢治、谷川俊太郎)主人公の体験に共感して物語に入り込む人もいるでしょう(ハリーポッターのような冒険譚)物語の中の小道具や、状況に憧れることもあるでしょう。翻訳が素晴らしくて、本国よりも日本で人気のある小説もあります(「赤毛のアン」のように)

小説の楽しみ方を知っていれば、人間関係や恋に悩める時には師となり、ふだんの生活の中では知り得ない世界を垣間見ることができ、自分の中の世界を無限に拡げられる可能性を信じることができます。誰かに貶められたとしても、落ち込んだりしなくても良いんだと!と時に勇気を与えてもらえます。

漫画のように絵がないから読むの大変と思うかもしれない。けれど、絵がないからこそ創造の世界が無限にひろがるのです。