認知心理学という分野で使われる「スキーマ」という言葉があります。「スキーマ」とはものすごく簡単に言うと、一つの「言葉」「名称」を聞いたときにそれに関する情報のまとまりの事を言います。例えば「犬」という単語を見たときに、「哺乳類」「ペット」「4本足」「警察犬」「わんわん吠える」「人の言う事をよくきく」などなど…瞬時に様々な情報をほとんど意識せずに思い浮かべて判断しています。赤ちゃんは世の中のすべてが新鮮で、知らないから知りたくて好奇心いっぱいに毎日学んでいます。周りの大人たちの言葉と、物事をつなげて覚えていきます。

 小さな頃に、何かに興味を持って一生懸命覚えている子は、その物事に対する情報がどんどん増えていきます。体験したり興味を持って覚えた事は、言葉にできないことも関連付けた記憶のかたまりとして記憶の中に蓄積されていきます。その記憶のファイルのようなものの中に関連する情報量が多いほど、他のファイルの中の情報と共有する記憶も増えていきます。

 別々に記憶したことも、「あれ?もしかして、あの事とこの事は繋がりがあるのかな?」と情報のつながりができていくと、それが増えれば増えるほど理解のスピードも記憶力も上がります。

 情報のファイルが増えるほど、学習の効率が上がります。たとえば、外遊びが好きで花で色水を作ったり花の蜜を吸ったりした体験をしている子は、学校で植物を習う時にはすでに知ってる花のしくみと結びつき、それがどういう事なのか理解できます。漫画日本史が面白くて読んでいる子は歴史を習う時にがんばって暗記しなくても、すでに頭の中にある記憶と結び付ければ良いので特に勉強する必要がありません。電車が好きで駅の場所などを地図で見て確認するのが好きな子は、地名などすでに知っていることと新しい知識を結び付けるだけなので学習時間も短い時間ですませられるでしょう。

このような「スキーマ」をたくさん身につける事ができれば、理解力が上がり、勉強時間を効率化できます。

 正直な事を言えば、中学生の勉強が一番大変かもしれないと思います。けれども中学生で習う事は世の中を理解するための基本的な知識を学ぶ時期です。中学生で習う5教科をしっかりと身につける事ができれば、世の中の言葉や仕組みをある程度理解し、わからない事が出てきたときにも自分で調べる事ができるようになります。

 初めて聞く言葉や習う事は、さっぱり意味がわからず理解することも大変です。そのため繰り返し記憶する努力が必要です。けれどこの時期にしんどくてもがんばって勉強すると、その後はどんどん楽になり勉強が楽しくなる可能性が強くなります。

学校で習っている時には何のために勉強するのかわからず、将来どのような事を目指すか決まっていなければ勉強するモチベーションも上がりにくいですよね。私も中学生の頃はなるべく勉強したくありませんでした。けれど、大人になって自分のやりたい事をやるために勉強しなおすとなったら「ああ、中学生の頃にもっとまじめに勉強すればよかった!」と思うのです。最近はただ暗記をする勉強法には否定的な方もいますが、暗記しているうちに理解できるようになる事もあります。理解できなくても詰め込むことで、後から理解できるようになることもあります。すべての人に当てはまる正しい答えはないので、自分なりの勉強法を見つけるしかないかもしれません。

 素直さは学力をあげるためにはとても良い資質ですが、教わった通りに勉強するだけではなく、どうしたらもっとラク(効率的)に答えが出せるだろう?と自分で工夫してみる事も大事です。自分で見つけた勉強法やコツは忘れる事がないからです。

「スキーマ」を増やして効率よく勉強できるようになりたいと思ったら、遊ぶ時間も、好きな事に打ち込む事も、ぼんやりする時間も大切なことです。